抗体開発技術

抗体開発における8つの工程


① 免疫原の設計

免疫に使用する精製タンパク質に工夫を施すことで、マウスに対する免疫原性を増強させる免疫原性増強抗原技術を有しています。これにより、免疫原性が弱い、ある種の抗原の抗体価を劇的に上昇させることが可能です。ペプチド抗原を免疫する場合、当社は独自のペプチド配列設計システムを用いて成功率の高い免疫領域を選定しています。また、これとは別のアプローチで設計できる株式会社エムティーアイが開発した「MODELAGON™」(機械学習機能(AI)搭載エピトープ解析システム)も導入しました。現在はこの二本立てでさらに効率的に抗体価の上昇率が高い免疫原ペプチドを設計することが可能となっております。また、3Dモデリングも解析に取り入れ、機能性エピトープを選定することも実施しています。

② 免疫原の調製

当社はISO13485を認証取得し、大腸菌発現系、昆虫細胞発現系、動物細胞発現系などで調製したリコンビナントタンパク質やネイティブタンパク質を使用して製品製造を行っています。免疫原用のタンパク質調製には、これらの技術の中から最適なものを選択し、抗体取得の目的や対象分子の性質に合わせたものを作製しています。また、数多くの免疫原作製の経験とノウハウを、製品構成品の開発や製造にもフィードバックし、全社的な技術向上も推進しています。

③ 免疫動物の選択

最適免疫動物の選択

動物を利用した抗体作製はその免疫機能を利用するため、免疫動物がもともと持っているタンパク質、いわゆる自己抗原に対しては、免疫寛容によって抗体価が上昇しないことがあります。当社では、鳥類を含めた8種類の動物でモノクローナル抗体が開発できることで、対象分子の相同性や、取得抗体の目的に応じて、最適な動物を選択することができます。

人工リンパ節

当社は2004年のNature Biotechnology誌に報告された人工リンパ節技術を導入しました。血中抗体価が通常のマウスの10~100倍高くなる特長を活用し、難易度の高い標的分子に対して、多様性に富んだ高親和性抗体が誘導されたマウスを人工的に作出する技術として適用しています。

④ モノクローナル抗体作製技術

ハイブリドーマ

1975年に初めて報告された古典的な方法で、当社では1983年に技術導入して以降、数多くのモノクローナル抗体を開発してきた基盤技術の一つです。ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ニワトリのモノクローナル抗体を取得した実績があります。

ファージディスプレイ技術

当社は、1999年にファージディスプレイ技術を基盤とした子会社:株式会社抗体研究所を設立して以降、技術開発に取り組んできました。2016年に事業譲渡により技術を取り込み、現在はハイブリドーマ法、SPYMEG技術と並んで当社の三大技術の一つとして位置づけています。
当社はファージディスプレイ技術による抗体作製を、完全ヒト抗体だけでなく、ハイブリドーマ法が利用できない動物からの抗体取得にも用いています。特にウサギ、ニワトリ、ヒツジのモノクローナル抗体の開発には重要な役割を果たしています。
抗体取得の源泉となるファージ抗体ライブラリーは、人種や年齢の異なる患者群由来のヒト抗体ライブラリーが6種類、PRIME(動物事前免疫;animal Pre-IMmunE)ライブラリーは4種類を保有しています(2020年7月1日現在)。また、各対象分子を免疫した動物由来のライブラリーの作製も行っています。
中国の医薬分野で最大手の国有企業であるSINOPHARMの子会社であるCNBGへのライセンスアウトなど、当該技術で単離した2つの完全ヒト抗体は、それぞれ導出先の製薬企業で開発が進められています。

SPYMEG

当社は、新規ヒトフュージョンパートナー:SPYMEGの開発に成功しました。これを用いるとヒトの血液から完全ヒトネイティブモノクローナル抗体が取得できます。完全ヒト抗体を取得できる技術はいくつか報告されていますが、ハイブリドーマ法で実用的に利用できる世界で唯一の技術です。また、ヒト細胞からモノクローナル抗体を単離する特徴から、得られる抗体は完全にネイティブな抗体であり、ヒト体内で機能していた抗体を再現できます。そのため、新規疾患メカニズムの分析にも用いることが可能です。また、人工的な要素がないため、単離した抗体を治療用抗体に展開すると、副作用が最小限に抑えられることが予想されます。
特に抗体価が上昇しやすい感染症に対する中和抗体の取得に適性が高く、当該技術で単離した3つの抗体は、CNBGへライセンスアウトしています。

MAGrahd

懸垂液滴アレイ式磁気ビーズ反応法(MAGrahd) 法は、富山大学が開発した、抗原特異的な抗体遺伝子の単離法に関する基盤技術です。当社は2017年に、MAGrahd法を自社開発に実施できるライセンスを取得しました。 当該技術に基づく新しい抗体単離システムは、遺伝子組換え技術を用いて必要な抗体をわずか5日間で単離同定できる世界最速レベルのシステムです。

⑤ 抗体のスクリーニング


ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降といった基本的な手法に加え、親和性分析や細胞への結合を評価するフローサイトメトリー、免疫染色、Cell-based assayという多様なスクリーニング方法を組み合わせることにより、目的に合った抗体を効率的にスクリーニングする技術を有しています。また、JSR グループ内で多面的な解析を実施し、各種測定系などに最適な抗体を選択することも可能です。

⑥ 抗体の機能性評価

取得した抗体で様々な機能性評価が可能です。例えば、エピトープマッピング、中和活性評価、動物種間交差反応性評価、インターナリゼーション活性評価、ADCC/CDC活性評価、抗原抗体反応における糖鎖修飾の影響解析、親和性解析、遊走・浸潤阻害活性評価、抗腫瘍効果・転移抑制効果評価、腫瘍集積性解析、ADCモデル評価などといった評価の経験があります。

⑦ 抗体の最適化

取得した抗体のアミノ酸配列を解析し、キメラ抗体、ヒト型化抗体、scFv化やFab/F(ab)’2化、Bispecific抗体などの改変抗体の作製が可能です。ファージディスプレイ技術によるAffinity maturationで、反応性を劇的に向上させる改変技術も有しています。

⑧ 抗体の製造

IgG、IgM、IgA、IgYといった様々な抗体種のハイブリドーマ、CHO細胞、大腸菌で抗体製造の経験があります。動物投与試験用のin vivo gradeでの製造も実施しています。
また、ハイスループットスクリーニング向けの多種少量生産と、候補抗体の大規模評価や原料製造に必要な大量生産のどちらにも対応できる体制を整えており、後者では1~5g/Lの収率で年間1kg以上(理論値)の抗体を製造可能です。

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