革新的な診断技術
遺伝子検査技術と開発
遺伝子検査には、血液や組織、喀痰、尿など、さまざまな検体から抽出した患者さん自身の核酸から薬の効果や副作用にかかわる情報を得る検査や、感染症を引き起こすウイルスや細菌の遺伝子の有無を検出する検査などがあり、その情報は多岐にわたります。
当社では、PCR(Polymerase Chain Reaction)と呼ばれる核酸増幅法を応用した、さまざまな臨床検査薬を開発しております。PCRによりDNAが増幅される状態を蛍光色素によってリアルタイムに検出する手法をリアルタイムPCRといい、実際に感染症の検査等で多く使用されています。
また、多くの遺伝情報を得るために、複数の遺伝子変異などを一度に確認するための手法として、PCR-Luminex®法があります。Luminex®法は100種類の蛍光ビーズを用いて異なる遺伝情報を同時に検出する方法で、がんの遺伝子診断薬や、ウイルスの遺伝子型判定などに使用されています。疾患との関連がわかっている数十種類の遺伝子変異などを簡便に同時検出するために非常に有用な方法です。
現在の遺伝子診断においては、さらに多くの情報が必要な場合があります。次世代シークエンサー(Next Generation Sequence:NGS)の技術が進展し、短時間で全遺伝情報を得ることも可能になりました。NGSとは、何百万ものDNA断片を同時に並列解析できる技術であり、これまでの遺伝子解析技術に比べ処理能力が飛躍的に向上しました。この技術により、患者さんの全ゲノム解析を行い、個人の遺伝的な特徴から、それぞれに適した治療方針を決定する精密医療が臨床の現場でも可能になってきました。
当社ではNGSをはじめとする最先端の技術も取り入れ、がんや感染症などの診断に有用な遺伝子情報を迅速・高感度に検出する臨床検査薬を医療現場に提供するための開発に着手しています。
これらの技術に加え、複数の遺伝子をバランスよく同時に検出するためのプライマー・プローブの設計、試薬組成などにノウハウを持っており、臨床の現場のニーズに丁寧に、素早く対応しております。
化学発光試薬開発
化学発光試薬は現在の免疫・血清学検査試薬の主流となっている測定系です。磁性粒子の表面に結合させた抗原または抗体で血清中の目的の物質を磁性粒子上に捉え、更にそれを酵素標識した抗体でラベルをし、化学発光基質による発光で目的の物質を検出します。磁性粒子を用いることで測定の自動化、迅速化を実現し、また化学発光で検出することで高感度、かつ低濃度から高濃度まで広い測定範囲で目的の物質を測定することができます。
化学発光試薬の開発においては、まずこれらの試薬を構成する磁性粒子、抗原、抗体の開発と選定から始まります。磁性粒子は、グループ企業であるJSRライフサイエンス株式会社との緊密な連携により最適な表面特性を持つ粒子を選択することが可能です。抗原、抗体は試薬の性能を左右する非常に重要な原料であり、目的の試薬性能が得られるような抗原・抗体が開発できるかどうかが試薬の性能を決定づけますが、MBLはこれらの原料開発に強みを持っており、それぞれの試薬に適した原料を遺伝子工学的に開発しています。
次に、選定した原料を用いて試薬を構築します。磁性粒子への抗原・抗体の結合法の最適化、粒子保存や反応時の試薬緩衝液の最適化、測定パラメータの設定、検量線の設定等を経て目的の性能を持つ試薬を形にしていきます。試薬構築では、それぞれの反応時に適した試薬組成とすること、また保存安定性を保つことが重要であり、多くの試行錯誤が求められます。
最終的には、測定に必要な感度・特異度等の分析性能、測定安定性を持つこと、また特に体外診断用医薬品においては臨床的に意義のある性能を持つことを性能試験にて確認します。