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抗原・抗体作製技術

人工リンパ節技術

人工リンパ節技術は、国立研究開発法人理化学研究所の渡邊武先生らによって報告された方法を基盤とした、高性能抗体の作製技術です。この技術は、マウスの腎臓に人工的にリンパ節を創りだす技術で、通常のリンパ節には様々な抗原に対応する免疫細胞が存在するのに対して、人工リンパ節は標的抗原に特異的な免疫細胞のみで構成されるという特長があります。免疫したマウス内で構築した人工リンパ節を免疫不全マウスに移植すると、標的抗原に対する血中抗体価が通常マウスの10~100倍高くなります1)

本技術を使用したモノクローナル抗体作製では、従来の方法に比べて取得できるモノクローナル抗体数が10倍以上になり、極めて結合力の高い抗体を取得することが可能です。
人工リンパ節技術
1) Suematsu S. and Watanabe T. Nature Biotechnology. 22:1539-1545 (2004) (PubMed: 15568019)

ヒトモノクローナル抗体作製技術

抗体医薬品ではヒト化抗体やヒト遺伝子由来の完全ヒト抗体が開発されています。ヒト抗体は体内で異物と認識されないため、治療の効果が高く、かつ安全だと考えられています。完全ヒト抗体の作製方法は、ファージディスプレイ法、ヒト型化トランスジェニックマウスに免疫する方法、ヒト抗体産生細胞から抗体遺伝子を解析する方法、フュージョンパートナーと抗体産生細胞を融合する方法などがあります。当社ではファージディスプレイ法、フュージョンパートナーとの融合法(SPYMEG)を使用しており、それぞれの特徴を活かして効率的に抗体医薬シーズのヒト抗体の開発を行っています。

ファージディスプレイ法*によるヒトモノクローナル抗体の作製

ファージディスプレイ法は繊維状大腸菌ファージに抗体(Fab 型、scFv型)を提示させ、目的の分子(抗原)に結合する抗体を取得する方法です。この方法は、膨大な種類の抗体を含んだ抗体ライブラリーが構築できるため、非常に希少で結合力の高い抗体を、迅速かつ効率的に取得できます。また、動物に抗原を免疫しなくても抗体ライブラリーを作製することが可能なため、致死性の高い毒素やウイルスに対する抗体作製にも有用な技術です。当社では、10~100億種類の抗体を含んだヒト抗体ライブラリーを多数所有しており、抗癌効果のある抗体やウイルスを中和する抗体の開発に成功しています。また、ファージディスプレイ法の希少な抗体を見つけ出す特徴を活用して、有用な創薬ターゲットにも関わらず抗体作製が難しいGPCRや糖鎖修飾に対する抗体を取得するための手法や、NGSとデータサイエンスを組み合わせて膨大な抗体ライブラリーから効率的に抗体を選び出す方法の開発を行っています。

*ファージとは、特定の細菌に感染するウイルスのことです。抗体ファージは、繊維状大腸菌ファージ上に抗原結合能を持った抗体断片(Fab 型、scFv型)を提示し、ファージ内には、提示された抗体の遺伝子が含まれます。様々な分子に対して結合する抗体ファージ集団から目的の分子(抗原)に対する特異抗体ファージを選択することにより、その抗体遺伝子も同時に取得することができます。また、取得した抗体遺伝子から、抗体断片(scFv、Fab 型抗体)、IgG タンパク質等を作製することができます。

ヒトフュージョンパートナーSPYMEGによる完全ヒトモノクローナル抗体の作製

SPYMEG SPYMEGは、奥羽大学薬学部 教授 山本正雅先生と共同で開発した、完全ヒトモノクローナル抗体取得用のフュージョンパートナー細胞です。ヒトの血液から採取した抗体産生細胞とSPYMEGを融合させることで、高効率かつ簡便に完全ヒト抗体産生ハイブリドーマを取得できます。マウス以外の動物種で作製したハイブリドーマは長期間の培養により抗体産生能を失うことが多いですが、SPYMEGで作製したハイブリドーマは長期間の安定培養が可能なため大量培養・精製ができた抗体が多数あり、これまで報告されてきたどのヒト抗体フュージョンパートナー細胞を使った場合よりも、はるかに優れています。また、SPYMEGで作製された抗体は、ヒト体内で産生される完全ヒト抗体のため、治療用抗体のシーズだけでなく抗体機能の解析や、抗原の同定、ワクチン候補の探索など、ヒトの免疫系に関わる幅広い研究への応用が期待できます。

MAGrahd法

MAGrahd法は富山大学 磯部正治先生、黒澤信幸先生らが開発した、抗体産生細胞1細胞から抗体遺伝子を解析する方法です。抗体産生細胞の単離から抗体タンパク質の発現まで5日以内で可能であり、世界最速レベルの抗体取得方法です。この方法では抗体遺伝子を取得した後、抗体医薬品製造で主流のリコンビナント抗体として発現させるため、高い製造安定性が担保できます。また、非常に高い親和性の抗体が得られることがあるウサギモノクロ―ナル抗体や、珍しいモルモットモノクロ―ナル抗体の取得も可能であり、従来のマウスモノクロ―ナル抗体では得られない高性能の抗体開発が可能となっています。

人工リンパ節技術

<参考文献>
・ Kurosawa N. et al. BMC Biol. 28;10:80. (2012) (PubMed: 23017270)
Kurosawa N. et al. Sci Rep. 29;6:25174. (2016) (PubMed: 27125496)

リコンビナントタンパク質の作製技術

当社では診断薬原料に使用するリコンビナントタンパク質を自社製造しています。診断薬に使用するリコンビナントタンパク質は、生体内と同じ立体構造を持つタンパク質を高純度で大量に精製する必要があります。当社では、高純度なタンパク質精製のために精製カラムの自社開発や、生産量を上げるために動物細胞、昆虫細胞、大腸菌などで高密度培養系を導入するなど、最適な生産方法を開発しています。また、新たな測定機器を導入してタンパク質の物性を解析することで、より生産安定性や保存安定性を高める改良方法を開発しています。

抗原作製技術

より高性能な抗体開発のためには、抗原の質が非常に重要です。当社では診断薬原料と同レベルの高純度のリコンビナントタンパク質を抗体作製の抗原として使用することで、生体内のタンパク質に強く反応する抗体を取得することが可能となっています。また、生体内で異物として認識されず抗体ができにくいタンパク質を人工的に異物として認識させる免疫原性増強技術の開発や、タンパク質の特定の部位(エピトープ)に結合する抗体を作製するために株式会社エムティーアイのAIエピトープ予測アルゴリズム(MODELAGON™)の導入などを行い、目的の機能を持つ抗体を開発するために、最適な抗原を準備する手法を開発しています。
MODELAGON™に関するプレスリリース

特殊動物モノクロ―ナル抗体

抗体は生体内に入った異物に対して作られることから、系統的に種が離れている動物ほど抗体が出来やすいです。例えば、ヒトとマウスで相同性の高いタンパク質でも、ヒトとニワトリでは相同性が低いことがあり、ニワトリの方がより強い抗体が取得できることがあります。当社では、このような相同性の高いタンパク質の抗体取得に対応するため、マウス、ラット、ハムスター、ラビット、モルモット、ニワトリ、ヒツジなどで検討し、モノクロ―ナル抗体を取得してきました。また、ラクダ抗体(VHH)やサメ抗体(IgNAR)など化学耐性・熱安定性が高い性能を持った抗体構造もあります。ファージディスプレイ法や遺伝子改変技術により様々な動物種の抗体が開発可能になっており、新しい機能を持った抗体構造の探索を行っています。


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