#02
Project Story
産官学で同じ目的に
向けて走った。
副作用予測検査キットの
スピード開発。
産官学で同じ目的に
向けて走った。
副作用予測検査キットの
スピード開発。

- Project『NUDT15』
- チオプリン製剤の重篤な副作用の有無を診断するため、NUDT15遺伝子 R139C多型を検出するキット(製品名:MEBRIGHT™ NUDT15キット、以下「本キット」)を開発するプロジェクト。2016年6月から東北大学とMBLとの共同開発として開始し、2016年9月にはAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)のゲノム創薬基盤推進研究事業に採択された。厚労省×アカデミア×MBLの連携により、始動から2年弱というスピードで製品化を実現。
- Outline
-
チオプリン製剤は炎症性腸疾患を始め、白血病、リウマチ性疾患、臓器移植後の治療に効能効果が認められた安価かつ有用な薬剤であり、日本国内で広く使用されている。しかし日本人を含む東アジア人の中には、服用後早期に重度の白血球減少症や全身脱毛症といった重篤な副作用を生じることが知られてきた。以前はこの副作用の事前予測方法がなく、重篤な副作用への懸念から、チオプリン製剤の服用自体が受け入れられないことも少なくなかった。
しかし近年、この副作用の発症とチオプリンの代謝酵素の1つであるNUDT15の遺伝子多型との間に強い関連があることが発見された。本件はNUDT15の139番目のアミノ酸を決定する遺伝子多型の情報を、正確かつ迅速に提供できる体外診断用医薬品を開発し、適切な診断に結びつけることを目的として始動。
Member
-
- 松岡 修
- MBL営業本部 遺伝子事業推進部 部長
- 2007年入社
-
- 阿部 由紀子
- G&Gサイエンス株式会社 代表取締役・MBL 新規事業開発部 兼任
- 2000年入社
-
- 岡田 英樹
- MBL遺伝子試薬開発ユニット シニアエキスパート
- 2003年入社
-
- 松島 洸達
- G&Gサイエンス研究開発部・MBL遺伝子試薬開発ユニット兼務
- 2016年入社
01それぞれの役割
「わかる」安心を、
たくさんの人へ届けたい。
本キットに求められる性能や使用を明確にし、開発を円滑に進めるために社内外の調整を牽引したのは、営業本部/遺伝子事業推進部部長の松岡。
松岡:本キットへの医療現場の期待値は高く、また厚生労働省の「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」でも早期導入が求められる検査項目として選定されていました。このため、いかに早くこの検査を医療現場へ届けられるか、という点を常に意識し、社内外の調整にあたりました。
開発責任者として、開発を強いリーダーシップでリードしたのは、遺伝子試薬開発ユニット/ユニット長兼、G&Gサイエンス代表取締役の阿部。
阿部:初のリアルタイムPCR製品であったため、判定アルゴリズムの構築に試行錯誤しました。私は開発に関わる代表として東北大学との連携などに携わり、特許関連手続きや厚労省との調整、検査センターへのヒアリングについては松岡さんを先頭に推進いただきました。
当時G&Gサイエンス研究開発部の部長であった岡田は、開発の進捗管理を担い、MBLとG&Gの連携、またMBL内での部門間連携を強固にした。
岡田:副作用の発症頻度自体は高くないことから、プロジェクト始動前は検査数がどれだけ見込めるのか、といった懸念も社内で挙がってはいました。しかしたとえ副作用発症率が100人に1人であったとしても、本キットは100人中100人に結果を提供でき、より最適な治療に導くことができます。その影響力の大きさや社会的意義は、プロジェクトメンバー全員が認識していました。
途中参画でありながら、高い専門性を持ってデータを抽出し、開発を推し進めたのはG&Gサイエンス 研究開発部の松島。
松島:開発部分は当時の主任と共に2名体制で条件検討・考察を行いました。当時は入社直後ということもあり、目の前の開発に必死で取り組む日々だったのですが、上市後に「特別なプロジェクトだったのだな」と、ようやく認識できた感覚です。

02産官学連携によるスピード感
今必要なものを、
今患者さんに届ける。
本件は産官学連携プロジェクトとして始動。通常3年以上かかる体外診断用医薬品(以下、体外診断薬)の開発だが、1年10ヶ月というスピードで製品化し、患者さんに届けることができた。その要因とは何だったのか?
阿部:東北大学協力の元で揃った検体や、これまで東北大学の依頼で検査を受託していた検査会社との連携は最短距離での開発に不可欠でした。さらに各部署の担当者が情報共有、進捗管理を適切に行い、各自の役割をよく理解して動けていたからこそ、これまでにないスピードで開発・申請・承認に至ったと認識しています。
松岡:海外企業との特許権交渉が必要であったため、早い段階で現地に飛んで交渉したことも印象深いです。また、最短距離での開発が進む中、製造販売承認申請をいかに早く推し進めるかも重要でした。厚労省や社外の専門家(臨床医)と連携し承認申請を加速させるよう努めました。
松島:当初は副作用のリスクが明確である3パターンの遺伝子型で想定されていた判定結果ですが、塩基配列の組み合わせとしては6パターン存在するため、これを網羅していなければ製品として不十分であると分かり、早期に設計を見直す決断をしました。より完全な製品のために最善を尽くすという点で、迷いはありませんでした。
阿部:産官学連携が立ち上がった時点で、スピードが求められることは必須です。「産」である私たちが遅れることでタイミングを逃し、これ以上副作用に苦しむ人を増やすことは、決してあってはなりません。「今必要なものを、今患者さんに届ける」ことが重要で、MBLはそれを実現できる会社だと信じています。

03MBLだから達成できたこと
たとえ姿が見えなくても、
みんなが同じ目的へ走っていた。
プロジェクト進行中、各メンバーにはどのような印象を抱いていたのか?
松島:みなさんとても優秀な方だな、というのが正直な印象です。材料となるデータが揃っていたので、データ収集という点で苦労することがなかったのも印象的でした。
阿部:松島さんは入社間もないにも関わらず、確実なデータを上げながらよく付いてきてくれたな、と感謝しています。また、私はこのプロジェクトは松岡さんから始まったと思っています。松岡さんが各所を飛び回って承認を得てくれたからこそ、私たちは安心して開発に集中できました。信念を持って各交渉にあたってくれたことに感謝しています。
松岡:本キットの重要性を理解していたので、「患者さんや医療現場のために」という思いがスタートでした。そこへさらに「開発のみなさんの頑張りを無駄したくない」という思いも加わり、より強い力になったのだと思います。
岡田:メンバーが一堂に会する機会はほぼなかったものの、「みんなが同じ目的に向かって走っている」ことは分かっていました。今振り返ると、確認するまでもない信頼関係があったのだと実感します。このようなプロジェクトを、また一緒にやりたいですね。
各分野のプロフェッショナルによるこの強固なチームワークこそ、本プロジェクト成功の最大の要因なのだろう。

- 松岡 修
- プロジェクト当時:新規事業開発部。MBLの穏やかな社風に惹かれて入社。現在は薬事・臨床開発部での経験も活かしつつ、スピード感を求められる遺伝子事業推進部にてプロジェクトを牽引。
- 阿部 由紀子
- 新卒入社で立ち上げ間もない株式会社ゲノムサイエンス研究所(現G&Gサイエンス株式会社)に配属され、グループの遺伝子試薬開発を推進。2010年35歳でG&Gサイエンス株式会社代表に抜擢され、2016年よりMBL遺伝子試薬開発ユニットユニット長を兼任。営業本部を経て現在は新規事業開発部所属。
- 岡田 英樹
- プロジェクト当時:G&Gサイエンス株式会社 研究開発部 部長。新卒入社で株式会社ゲノムサイエンス研究所(現G&Gサイエンス株式会社)に入社。一貫して遺伝子試薬開発に携わり、一時期、MBL遺伝子試薬開発ユニットユニット長を兼務。現在はMBL遺伝子試薬開発ユニットシニアエキスパート。
- 松島 洸達
- プロジェクト当時:G&Gサイエンス株式会社 研究開発部。大学研究室で大学院時代からG&G・MBLと共同研究を行っており、教授からの紹介でG&Gに入社。入社間もなく、研究開発部として当プロジェクトに参画し、現在はMBL の遺伝子試薬開発ユニットを兼務。
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